Special Edition ②
少し前まで規律のいい寝息を立てていた彼女が、苦し気な表情でタオルケットを握りしめていた。
「彩葉?……彩葉、平気か?」
「っ……ッんっ……」
頻繁に起こる前駆陣痛なのかと思い、張るお腹と攣りやすい腰回りを優しく摩る。
気休めでしかないのは分かっている。
けれど、自分に出来ることがこれくらいしかない。
普段なら数分で治まるそれが、今朝は中々治まりそうにない。
「彩葉?……痛みがあるのか?」
額に汗のようなものが滲む。
タオルケットをきつく握りしめ、呼吸が浅い。
「ちょっと待ってろ」
すぐさま寝室を飛び出し、ゲストルームに常駐する医療スタッフの元へ。
助産師を連れ寝室に戻ると、彩葉の様子がおかしいことに気付く。
「彩葉?!」
「彩葉さんっ、私の声が聞こえますか?」
助産師の宮野 妙子(五十二歳)は、すぐさまお腹の張りと脈や瞳孔を調べる。
「すみません、救急車を呼んで貰えますか?!」
「救急車?」
「お腹の張り具合からして、胎盤か臍帯に異常が診られるようです」
「へ?!」
「私は搬送するための処置しますので、大至急救急車をっ!」
「分かりました」
郁はすぐさま救急車の手配をする。
宮野は血管を確保するため点滴を施し、胎児心拍数モニタリングの装置をお腹に装着した。
これにより胎児の心拍数と子宮収縮(陣痛)を測定できる。
「五分以内に到着するそうです」
「分かりました」
左手の人差し指にはパルスオキシメーターが装着され、右手の上腕には自動計測の血圧計が装着された。