Special Edition ②
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職場である東京白星会医科大学病院に搬送された彩葉。
家政婦の桜井から連絡を受けた郁の両親も病院に駆けつけた。
「彩葉ちゃんの様子はどんな感じなの?」
「詳しいことは分からない。宮野さんが言うには、胎盤か臍帯に異常が診られるって」
「……二人とも大丈夫かしら、心配だわ」
病院に搬送されておよそニ十分が経った頃、主治医の岡野 守(四十五歳)がLDR(陣痛から分娩、産後の回復まで行う部屋)から出て来た。
「先生っ、彩葉は、彩葉は大丈夫なんでしょうか?!」
「財前さん、落ち着いて下さい、大丈夫ですよ」
「本当ですか?」
「はい。ただ、既に産気づいてる状態なので、予定日より少し早いですが、このまま分娩になるかと思います」
「え?」
「臍帯過捻転と言って、通常臍帯は電話コードみたいにぐるぐると巻かれてる状態なんですけど、それが余計に巻かれている状態で、胎児へ十分な酸素や栄養素が行き届かない状態になりつつあります」
「……それで?」
「今日で37週ですし、胎児の体重が2300gほどで少し少なめですけど、誕生しても十分可能な体重です」
「……」
「それと、常位胎盤早期剥離気味なので、これ以上待ってもリスクの方が高くなります」
「……はい」
「時間を置いても帝王切開で分娩する以外に方法が無くなってしまうので、今のうちに促進剤を使用して分娩を促そうかと思うのですが、如何でしょうか?」
「妻は何と言ってますか?」
「出来るだけ胎児に安全な方法で、と仰ってます」
「私は妻の判断を尊重して、先生にお任せします」
「分かりました。では、直ぐに投与を開始します」
「宜しくお願いします」