Special Edition ②
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「財前さん」
「あっ、……おはようございます」
「彩葉は?……中ですか?」
「……はい」
「見て来ましょうか?」
「え?……大丈夫なんですか?」
「えぇ、自分なら。……財前さんも中に入れるか、聞いて来ます」
「……お願いします」
スクラブ着姿の葛城医師が声を掛けて来た。
この病院の医師なのだから、当然どこの部屋でも立ち入れるだろう。
医師仲間、同僚、先輩後輩の仲だと分かっていても、やっぱりイラっと来るのは俺の心が狭いからなのか?
「郁、知ってるお医者様なの?」
「ん、……彩葉の一つ先輩で流産しかかってた時に自宅で治療して下さった人だよ」
「あぁ~、彩葉ちゃんから聞いてるわっ!」
『LDR』と書かれた部屋のドアをじっと見つめていると、看護師と一緒に葛城医師が姿を現した。
「今促進剤投与した所で、子宮収縮の状態を一時間モニタリングで測定してるみたいです。そのうち陣痛が始まると思うので、今のうちならゆっくり会話出来ると思いますよ」
「お一人しか許可できないのですが、ご主人様で宜しいでしょうか?」
「はい」
「では、消毒等をお願いしたいので、こちらにお願いします」
「母さん、行って来る」
「彩葉ちゃんに宜しくね」
「あぁ」
「では、自分はこれで」
「あのっ、その節は彩葉ちゃんがお世話になりました。郁の母です」
「初めまして、葛城と申します。友人として当然のことをしただけですので」
「それでも。……有難うございました」
「いえ。……では、失礼します」
葛城は会釈し、その場を後にした。
郁は看護師と共にLDRの隣りの部屋へと入って行った。