Special Edition ②
*
「彩葉」
「……郁さん」
「お疲れ様」
「……ンフフッ、やっとママになれました」
「ん、俺もパパにな」
陣痛促進剤を投与後、陣痛が開始したものの、微弱陣痛が十四時間ほど続き、その間に胎盤が更に剥離かかったのを見極め、最悪の状態を避けるために帝王切開に切り替えた。
経腟分娩であれば立ち会う予定であったが、帝王切開に切り替わったことで郁は出産の瞬間に立ち会うことが出来なかった。
けれど、母子ともに健康であればそれが一番。
他に望むものは何もない。
長丁場を乗り切ってくれた妻へ、何とも言えない感謝の気持ちが込み上げて来る。
「やだっ、郁さん、泣いてるんですか?!」
「っ……、泣いてなんてないからっ」
「フフッ、二人だけの秘密にしておきますね」
「ったく」
涙腺が緩む。
親になるって、本当に感動ものだ。
「赤ちゃん見ました?」
「ん、さっき。抱っこもして来た」
「ええええええええ!!私なんて、チラッと見ただけなのに~~!!」
「そうなのか?」
「両手に装置がついてましたし、促進剤で疲労困憊なうえ、麻酔で取り出された感覚も無いし」
「そうだったんだ……。ごめんな、先に抱っこしちゃって」
「フフッ、いいですよ、別に。パパなんだから」
「……本当にありがとう」
ベッドに横たわる彩葉の額にそっと口づけた。
7月3日23時32分、身長47㎝、体重2318gの男の子。
少し小さめだが、手足がスラっとしているのは郁似?
色白で目がくりっとしているところは彩葉似だろうか??