Special Edition ②

7月4日の昼過ぎ。

「あっ、そう言えば、さっき看護師さん達からお義母様にって御礼を沢山言われたんですけど、何だったんですか?」
「………あ、それな」

郁はベッドサイドの椅子に腰かけ、盛大な溜息を漏らした。

「孫が生まれたお祝い?で、スタッフや入院患者を始め、正面入り口の玄関の所でプチギフトみたいなのを配ってる」
「え゛っ……」
「それだけじゃなくて、今日から彩葉が入院してる間は、入院患者の食事に祝い膳とやらでデザートを無償提供っていうのか?品物なのか金額なのかよく分かんないけど、何だか寄付みたいなのをするって聞かなくて」
「………」
「病状も患者それぞれ違うから、食べれない患者へは代替品で対応するとかさっき病院長と話し込んでた」
「……さすが、お義母様ですね」
「恥ずかしすぎんだろ」
「いやいや、それ言うなら郁さんもですから!」
「あ?」
「全国生放送の記者会見……あれも酷いです」
「あ、そんなこともあったな」
「もうっ、似た者親子ですよ」
「フフフッ」
「笑い事じゃありませんからっ!」

破天荒すぎる財前母子。
異常とも思える思考は、生まれて来たばかりの子供に受け継がれないことを祈るばかり。

「あ、それとな」
「……まだあるんですか?」
「その病衣、ダサいからデザインから一新するってのも言ってた」
「………」
「目に付いたものは、何でも思い通りにしたいんだよ、たぶん」
「今、アドレナリン出まくりでしょうね」
「産んだのは彩葉だけどな」
「フフフッ、ですよね」

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