Special Edition ②
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「櫂~、お家に着いたよ~」
郁と彩葉の第一子、名前は櫂。
自分の意思で道を切り開ける子、バランス感覚に優れた子、努力を惜しまない実直な子に育って欲しくて名付けた。
夏生まれというのもあって、海や水を連想させるように清々しく、心の綺麗な子に育つように。
彩葉は産後十日で退院。
櫂は低出生体重児という事もあり、保育器での生活をスタートさせ、彩葉より十日遅れて退院となった。
7月23日、青空が眩しい夏の日。
今日は家族三人が初めて自宅に揃う。
名古屋から駆け付けた彩葉の両親と郁の両親、そして郁と彩葉と……新しく家族に加わった櫂。
赤ちゃんの寝顔は、無条件で人の心を浄化する。
「本当に可愛いわねぇ~♪ずーっと見てても見飽きないわね~」
「両家にとっても初孫ですし、本当に幸せですね~」
リビングのバウンサーの中でスヤスヤと気持ちよさそうに寝ている櫂を大人六人で取り囲んでいる。
「彩葉ちゃん、横にならなくていいの?産後はしっかりと休まないと体に毒よ?」
「大丈夫ですよ、お義母様」
やっと思う存分眺めて抱っこして添い寝ができるようになったのだから、嫌というほど幸せを満喫したい。
けれど、こうも両家の両親がべったりとくっついていては、子供を連れて寝室にも行けず……。
「郁さん」
「……ん?」
両親達が櫂を眺めているのを横目に、手招きして耳打ちする。
「…――…あぁ、分かった」
一時間ほどすると、お腹を空かせた櫂が突然泣き出した。
それを待ってました!と言わんばかりに彩葉は櫂を抱き上げる。
「授乳の時間だから、すみません、失礼します」