Special Edition ②

どちらからともなく絡み合う視線。

出会い、別れ、幾多の試練を乗り越えた先に訪れた『倖せ』だから。
言葉にならない幸福な時間がゆったりと流れる。

細くて柔らかい彩葉の髪を指で優しく梳きながら、熱い視線を送る。

「郁さん」
「ん?」
「その、駄々洩れのフェロモンを何とかして下さいっ」
「は?」
「イケメンはパパになってもイケメンなんですね!」
「……フフッ、何だそれ」
「いやだから、カッコよすぎて目に毒なんですよ」
「いいだろ、夫婦なんだから」

顔を僅かに傾け、煽情的な視線を向けて来る。
困った人だ。
ママになって、手を伸ばせばすぐのところに息子がいるというのに……。

「彩葉だって、朝から俺を煽りまくりなんだけど?」
「へ?……どこがですか?」
「これ、わざとじゃないの?」
「っ?!」

大きめなバナナクリップで纏められた髪に指を絡ませ、うなじに近い首にあるほくろにキスが落とされる。

「俺がこのほくろ好きだって知ってて見せてんじゃないの?」
「っ……違いますよっ!暑いし、長くなって邪魔だし、授乳にも……」
「へぇ~、……耳まで真っ赤にして?」
「っ……」

郁さんには勝てない。
少し低めの色気のある声が耳元に落とされる。
そして、優しく首筋に触れる唇は、ゆっくりと味わうように這い伝う。

「かっ……おる……さんっ」
「……そういう声出したら、パパじゃいられなくなるだろ」
「っ……んッ……」

彼の言葉にハッとして顔を上げた、その時。
熱情を孕んだ視線が絡まり、熱く唇が塞がれ、バナナクリップが外され、さらりと髪が解かれた。


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