Special Edition ②
「……っんッ」
「ごめっ……大丈夫か?」
「……ん」
まだ傷口が癒えてない彩葉。
抜糸はしてあるけれど、まだ痛みは当然ある。
無理やりキスしてしまったせいで、体が捻るような体勢になってしまい痛みが走ったようだ。
「暫くは封印だな」
「っ……」
「……何、寂しいの?」
「……別に」
「フフッ」
「何よ」
そんな風に可愛い表情を向けられたら、控えようと思った感情もいとも簡単に取り払われてしまうのに。
帝王切開の傷口の痛みは一カ月くらい続くと助産師から聞かされている。
育児も家事も無理せず過ごすようにと。
授乳以外の育児は、家政婦のサポートをお願いし、俺も出来るだけフォローしないとな。
「彩葉」
「はい」
「一つだけ、約束してくれ」
「……はい」
「これからは、どんな些細なことでも我慢しないでくれ。多忙であっても遠慮せずに言うこと」
「……はい」
「これからは三人で、力を合わせて行こうな?」
「はいっ」
彩葉の額に優しくキスを落とす。
本当はぎゅっと抱き締めたい。
大きなお腹が邪魔して久しくきつく抱き締めていない。
触れられる喜びはあるものの、やっぱりぎゅっと抱き締め、密着するほど抱き締めたい衝動に駆られる。
物足りなさそうに見上げる彼女の唇にそっとキスをしようとした、その時。
「ふぇっ……っんッぎゃぁあああ~~ッ」
突然泣き出した我が子。
「チッ」
いいところだったのに……。
速攻で彩葉を奪われてしまった。
俺が外して置いたバナナクリップをテーブルの上から手に取り、彩葉はそれで髪をサッと纏め上げる。
彼女は泣き出す櫂の傍に駆け寄り、壊れ物を扱うみたいにそっと抱き上げた。
そんな彩葉を見つめ、まだ暫くは我慢の日々が続きそうだなと溜息が漏れる。
「(ママになっても)やっぱり、いい女だな」
「ん?……何か言いました?」
「いや」
綺麗な横顔にうっとりと見惚れて……。
~FIN~