Special Edition ②


パーティー会場のエトワールホテルを後にし、父親が用意した車で実家へと連れ戻された。

当初の予定通り、『祝賀記念パーティーが終わったら、家に戻ります』という約束だから。

響さんのマンションを出る時に、スマホを置いて来た。
彼ともう二度と関わらないようにするために、私なりのけじめをつけたつもりだったのだけれど。

こんな風になるとは思ってもみなくて。
響さん、心配してるだろうな。

「お嬢様」
「佐山さん」
「ご結婚、おめでとうございます」
「……ありがとう。でも、本当に入籍したのか、まだ実感が湧かなくて」
「今日の午後一番に、仁科様がいらっしゃいました」
「響さんが?」
「はい。事業締結の契約書と共に、婚姻届けをご持参して」
「………っ」
「凄く嬉しそうなお顔をされてましたよ」
「……そう」

自分の部屋に荷物を運んでくれた佐山さん。
いつだって私を励ましてくれる。

「その指輪、とてもお似合いですよ」
「っ……、ありがとう」
「今夜はゆっくりとお休み下さいませ。明日より、数日間検査入院となりますので」
「えっ?」
「……ご存知なかったのですか?」
「……えぇ」

佐山さんの言葉に、頭を殴られた気がした。

「私はてっきり旦那様より、お話があったものかと…」
「検査入院って、どういうことなの?」
「……経緯は私も存じ上げませんが、本来であれば、ブライダルチェックというもの少し前にご予約されまして」
「……なるほどね」
「仁科家へ嫁ぐ際に、安心して送り出したかったのかと思いますが…」
「父に限ってそれは……」

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