Special Edition ②
*
芽依が何者かに拉致られた。
いや、拉致った相手が誰なのか、分かってるんだけど。
調査会社の工藤に調べさせたところ、エトワールホテルから如月家の車で連れ出されたことが判明した。
その報告を受けたのが、二十三時少し前。
さすがにこの時間に『迎えに行きます』と電話するのも非常識だし、強引に連れ戻しに訪問するのも非常識だよな。
幾ら自分の妻を迎えに行くていだとしても、実家にいるなら何ら問題はない。
いや、あるのか?
あの父親なら……分からない。
ただ今日、業務提携の契約書と婚姻届けを持って自宅を訪れた時の表情は、凄く穏やかだった気がする。
今まで見たこともないほどに目尻を下げて、どこにでもいる普通の父親にしか見えなかった。
これまでの所業があったからこそ、そのギャップというのか。
半永久的に業務提携をするという提案に、悪魔魂が浄化されたのか。
何にしたって、結婚初夜に花嫁を拉致るとは、甚だイカれてるとしか思えない。
「芽依、……逢いたい」
溜息交じりに声が漏れ出した。
*
翌朝、芽依を迎えに行くために支度を整えていると。
ピリリリリッ、ピリリリリッ。
仕事用のスマホが突如鳴り出した。
「はい」
「おはようございます、大川(常務)です」
「ん、どうした?こんな朝早くから」
「つい先ほど、ドイツのNummer Eins(化学メーカー)から連絡が入りまして、今日の昼過ぎに社長ご一家が来日されるとの事です」
「その情報は確かか?」
「はい、確認取りました」
「分かった。では、先日会議で纏めた資料を十一時までに用意してくれ」
「承知しました」
芽依が何者かに拉致られた。
いや、拉致った相手が誰なのか、分かってるんだけど。
調査会社の工藤に調べさせたところ、エトワールホテルから如月家の車で連れ出されたことが判明した。
その報告を受けたのが、二十三時少し前。
さすがにこの時間に『迎えに行きます』と電話するのも非常識だし、強引に連れ戻しに訪問するのも非常識だよな。
幾ら自分の妻を迎えに行くていだとしても、実家にいるなら何ら問題はない。
いや、あるのか?
あの父親なら……分からない。
ただ今日、業務提携の契約書と婚姻届けを持って自宅を訪れた時の表情は、凄く穏やかだった気がする。
今まで見たこともないほどに目尻を下げて、どこにでもいる普通の父親にしか見えなかった。
これまでの所業があったからこそ、そのギャップというのか。
半永久的に業務提携をするという提案に、悪魔魂が浄化されたのか。
何にしたって、結婚初夜に花嫁を拉致るとは、甚だイカれてるとしか思えない。
「芽依、……逢いたい」
溜息交じりに声が漏れ出した。
*
翌朝、芽依を迎えに行くために支度を整えていると。
ピリリリリッ、ピリリリリッ。
仕事用のスマホが突如鳴り出した。
「はい」
「おはようございます、大川(常務)です」
「ん、どうした?こんな朝早くから」
「つい先ほど、ドイツのNummer Eins(化学メーカー)から連絡が入りまして、今日の昼過ぎに社長ご一家が来日されるとの事です」
「その情報は確かか?」
「はい、確認取りました」
「分かった。では、先日会議で纏めた資料を十一時までに用意してくれ」
「承知しました」