Special Edition ②
何年も前から取引したい相手・Nummer Eins。
独自の技術で、世界シェアを誇る薬品を数多く持っていて、仁科で取り扱っている製品の原材料にそれを使用したくて。
もう何度も現地に赴き、誠心誠意尽くして落とそうとトライしているが、未だに色よい返事を貰っていない。
社長が偏屈王でも有名で、十四歳の息子が日本のアニメファンだというのが唯一の突破口。
大川に資料を作らせている間に、俺は餌となる手土産を準備するため、秘書課のスタッフに指示を出す。
芽依がいる場所は分かっている。
少しくらい時間が遅くなっても……いいよな?
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常務の大川と共に羽田空港へとNummer EinsのKurt社長一家を出迎えに。
「大川」
「はい」
「出し切るぞ」
「はいっ」
愛妻家でもあるクルト社長は、年に数回、日本を来日する。
その度にこうして誠意を見せ続けている。
いつか、仁科製薬を受け入れてくれる日が訪れるその日まで。
何度でも、何回でも、誠意は尽くすべき相手であると思うから。
「副社長、来ました」
「ん」
到着ロビーに姿を現したクルト社長ご一家は、事前に知らされていたのか、仁科と大川の姿を目にして僅かに呆れたような微笑を向けた。
*
「何とか、会食まで漕ぎ付けましたね」
「大川のお陰だ」
ドイツ語が堪能の大川にフォローして貰い、足掛け四年。
初めて会食のアポイントが取れた。
とはいえ、今回の来日中にというわけではなく、新しい企画書を持参しての訪独の際になんだけれど。
それでも、手にしているクルト社長の名刺が何よりの証拠だ。