Special Edition ②
メイクに三十分、ヘアに三十分、着替えと休憩でニ十分。
9時前には別人の私が完成した。
「おはようございま~す。まどかちゃんが来てるって聞いて……って、うっわぁあっ!お人形さんみたーいっ!」
「栞ちゃん、おはよう」
「……おはようございます」
「どう?私、天才じゃない?」
「さすが、マキさん!!」
来栖 湊(事務所の看板女優)のマネージャーの山本 栞が出社し、事務所で小耳に挟んだようだ。
来栖 湊やメインモデルの担当でもあるマキの実力は折り紙付き。
有名ブランドのヘアメイクも担当するほどで、彼女の腕は確かだ。
まどかは高校生らしく薄づきメイクなのに、元々の目鼻立ちを活かして綺麗に仕上げたのだ。
髪は真っ黒ロングストレートの髪を緩く巻いた上で、左サイドに緩く編み込んだ状態で三つ編みに垂らしてある。
ネイルはほぼ透明に近い感じで、ほんのりと桜色に色づく程度。
腕や背中、鎖骨から首筋、膝下に仄かに香る程度のボディクリームを薄く塗布して……。
鏡に映る自分が芸能人に見える。
「マ、マキさん、凄いですっ!」
「あはっ、……喜んで貰えて嬉しいな」
「マキちゃん、ホント助かったわ」
「いえいえ、私の方こそいつもお世話になってるから」
専務という立場で頼んでくれた母親にも感謝だけど。
やっぱり、腕をふるってくれたマキさんには大感謝だよ。
「まどか、本当にタクシーじゃなくていいの?」
「あ、うん。駅で待ち合わせだし、電車で行くから平気」
「乗せて行こうか?」
「あ、大丈夫です、栞さん。ちょっと寄りたい所もあるので」
「そう?」
「はい」