Special Edition ②

事務所に程近い郵便局に寄って、ハンドメイドのオーダー品の発送をする。
毎年、長期連休中に集中して幾つか仕上げている。

郵便局を出たまどかはスマホで時間を確認しようとすると、廉からメッセージが届いていることに気付く。

『もうそろそろ家出る?』

え、もしかして、人形町駅まで迎えに来るとか言い出すんじゃ?
まどかは慌てて廉に電話をかけた。

『もしもし?……はよ』
「おはよう。今ね、母親の会社近くの郵便局に来てて、これから向かおうとしてるんだけど」
『出先か』
「もしかして、もう人形町駅に着いちゃったとか?」
『あ、いや、まだ。これから電車乗ろうとしてたとこ』
「はぁ~、じゃあ、乗らずに駅で待ってて?」
『ん、分かった』
「ごめんね、30分くらいで着くから」
『気を付けて来いよ』
「うん」

通話を切って、溜息が漏れる。
電話してよかったよ。
もう少し遅かったら、行き違いになるところだった。

いつだって彼は迎えに来たがる。
待ち合わせ場所を決めても、絶対というほど待ち合わせ場所をショートカットしようとする。
彼女としては凄く嬉しいんだけど、やっぱり申し訳なさも募って来る。

同じ年だし、いつでも対等な立場でいたいのに。
彼は毎日のように甘やかして来る。
こんな日常に慣れたら、絶対彼無しでは生きて行けそうにない。

高輪台駅から都営浅草線に乗り、東銀座駅で東京メトロに乗り換え、虎ノ門ヒルズ駅へと向かった。

改札口の手前にある柱の所に、彼がいた。

「廉っ」
「……え」

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