Special Edition ②
「ずっと楽しみにしてたんです」
「……分かってるよ。私だって悠真と同じ家に住むの、凄く楽しみだもん」
「そういう言い方、マジで狡すぎる」
双方の両親に結婚の意向を伝え、すぐに結納だけ交わした。
そして俺らは引っ越し、入籍、挙式、新婚旅行の順に進めることに決めて、忙しいながらも着実に歩み寄っていたはずなのに。
大阪支社の営業部との合同企画で、海外事業の新規プロジェクトの国内担当者になったらしく。
担当者が渡欧するまで、戦略企画に専念すると言い出した。
五月中旬。
既に引っ越し業者に頼んであって、今週末に璃子さんの荷物が搬入される予定。
それが落ち着く六月上旬頃に入籍して、挙式は六月二十九日の土曜日(大安)と既に決まってるのに。
もうトラブルなく、挙式までとんとん拍子でいけると思ってたのに。
ここへ来て、完全に急停止させられてる感満載なんだけど。
「暫くってどれくらい?」
「一カ月ちょっと?」
「それじゃあ、結婚式までってこと?」
「……そうなるかなぁ」
明らかに視線を逸らしてはぐらかそうとしてる。
「マリッジブルーにでもなった?」
「え?」
「俺から離れたいとか?」
「そんなんじゃないよ…」
「けど、俺と離れても大丈夫なんでしょ?」
「っ……そういう意味じゃないんだけど」
じゃあ、どういう意味なんだよ。
俺は今日だって明日だって一緒にいたいよ。
璃子さんを尊重して今週末にしたけど、一日でも早く無理にでも一緒に住みたいのに。
「璃子さん、後悔してます?」
「……してないよ」
「本当に?」
「……私、仕事辞めた方がいい?」
「え、何でそうなるんですか?」
「だって、してればしてたで、手抜きなんて出来ないよ。それは悠真だって分かってるでしょ」
「……」