Special Edition ②


「それで、喧嘩したからうちに逃げ込んだってわけ?」
「うっ……」

新規プロジェクトの国内担当責任者に抜擢され、約一カ月ほど大阪支社へ出向する辞令が下ったのが昨日。
その日の晩に婚約者の悠真に伝えたけれど、挙式を一カ月半後に控えている今、大きな案件を受け入れること自体に不服気味。

悠真の言いたいことは分かってる。
今が一番初々しいような甘酸っぱいような特別な時間だってことも。

明後日に引っ越しして、少しずつ二人で新居に住みなれて、六月になったら入籍して。
新婚生活がラブラブで毎日楽しい時間を過ごす中で挙式をして、そのままハネムーンでまったりすると二人で散々話し合って決めた。
それを私が仕事を理由に全部ぶち壊したんだから、言い訳のしようがない。

同期入社で親友でもある和沙の自宅に逃げ込んだ私は、駅前のお弁当屋さんで購入したおろし竜田揚げ弁当を口にする。

寧々(ねね)ちゃんは?」
「もう寝てるよ」
「……そうだよね」

既に二十一時半を過ぎていて、四歳の寧々ちゃんは既に就寝しているらしい。

「結婚したからって仕事辞めなくてもいいけど、子供ができたら短期間でも仕事から離脱するのは余儀なくされるよ?」
「……分かってる」
「それに、今と同じように大きなプロジェクトが始動する度に案件引き受けてたら、彼が拗ねるのも当然だよ」
「…分かってるよ」
「仕事か家庭か、どっちかを選べとは言わないけど、両立できないなら、ちゃんと最初からウエイトをどっちに振り分けるか決めときな」
「……ん」
「それと、彼を残して行く身なんだから、今まで以上に愛情注いでやんないと、私の二の舞になるよ」
「和沙…」

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