Special Edition ②

和沙はインテリアコーディネーターとしてだけでなく、設計士としても活躍するデザイン科のホープで、入社当時からその才能は抜きん出ていた。

大学時代から付き合っていた彼と五年前に結婚し、翌年に寧々ちゃんを出産し、絵に描いたような素敵な家庭を築いていた。
けれど、大手商社に勤務する旦那さんの海外赴任が決まり、それでも子供がいるから何とか単身赴任生活をフォローしていたけれど。
僅かなヒビに少しずつ亀裂が入るようになって、三年経った頃には修復できないくらい大きな溝が浮き彫りになった。
二十代後半の働き盛りというより、まだ遊び盛りだった彼が、異国の地で寂しくて妻である和沙を他の女性にダブらせ浮気した。

日本とドイツ。
七時間も時差のある遠距離な国。

言われなければ、行くことがなければ気付かずにいられただろう。
和沙の場合は、その浮気相手の女性が、わざとご丁寧に情事後の写メを都度送って来たらしい。
匂わせメールというより、決定的な証拠として別れさせるために。

和沙はそれを保存し、弁護士を通して不貞証拠として離婚に至った。

幼い子供を抱え、離婚する勇気を振り絞るのは本当に大変だったと思う。
寧々ちゃんが生まれる前から和沙とは仲が良かったから、あの泥沼のような時期もずっと傍にいた。
だからこそ、痛いほど分かってる。

顔が見えない距離にいる相手を信じて待つ時間は、頭で考えているよりも地獄なんだと。
それが我が身に降りかかり、和沙と同じ思いを悠真に強いているということも。

『結婚したからって、安心材料になんてならないから』

和沙が何十回と口にした言葉。
身をもって経験している彼女の言葉は、私にいい意味で緊張感を与える。

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