Special Edition ②

日曜日なのに、急な接待が入った悠真。
夕方前に自宅を出て行き、二十一時を回っても帰宅しなくて。

まだ荷物の整理が終わってない新居に独りぼっちになりたくなくて、家を飛び出し、和沙の家に来てしまった。

私が相談できる相手なんて限られている。
私はあまり心の内を話すのが得意ではないから、いつだって何でも溜め込んでしまう性格。

「泊っていくんでしょ?」
「……いい?」
「それは構わないけど、蓮水くんにはちゃんと居場所伝えておきな。警察に失踪届出されたら面倒だから」
「失踪届って……、さすがにそんなことはしないと思うけど」
「分からないよ?彼の愛の重さだなんて、彼じゃなきゃ分からないでしょ」
「……」
「私から見ても、璃子より彼の方が愛の比重多いと思う」
「……」
「それだけ、愛されてるってことだよ」
「……ん」

分かってる。
私は結構ドライな性格だと思う。
結婚直前に恋人に振られても、結局仕事をしながらいつの間にか乗り越えられた。
いや、仕事があったから乗り越えられたのかもしれない。
だから、彼と仕事を天秤にかけたら、仕事の方が重かったのかも。

今の関係性ならどうだろう?

悠真と仕事。
天秤にかけたら、どっちが振り切るだろう?

考えたくもない。
悠真も大事だし、仕事も大事だ。

悠真の父親である社長も、結婚後も仕事は続けていいと仰って下さってる。
結婚を決意したあの時は、深く考えずに流されたってのもあるけれど。
言葉のまま鵜呑みに流されていいのだろうか?

「白か黒かじゃなくてさ、……グレーでも私は成り立つと思うよ?」
「グレー?」

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