Special Edition ②

和沙はサバサバとした性格で、いつだって欲しい言葉を与えてくれる。
それだけ、酸いも甘いも経験しているからだと思うけど、私にとってはかけがえのない親友だ。

「結婚を機に仕事を辞めて家庭に入って、蓮水グループの嫁として社長や社長夫人をサポートするのもアリだし、今のまま結婚後も仕事を第一線でバリバリ働いて、会社のために尽力するものアリだよ」
「……うん」
「だけどさ、人生なんて百人いれば百通りの考えがあって、選択肢は無限だってこと」
「……」
「結婚して仕事は続けるけれど、今のフル()フル()フル()タイムじゃなくて、ゆるゆるのフルタイムとか、それこそパート社員とかでも全然アリだと思うの。子供でもできれば尚のこと」
「……あっ」
「今のポジションから降りたとしても、経験値はゼロにはならないでしょ。私を見なよ。辞めて出戻ってもちゃんと仕事は出来てるよ。むしろ昇格して前より給料多いし」

自嘲気味に和沙が笑う。
私を励ましてくれているということが何よりも有難くて。

「そうだね。グレーっていう選択肢もあるよね」
「そそ。社長に口きいて貰って、系列会社に移動っていう手もあるし、働き方なんて多様だよ」
「……フフッ、肩の荷が下りたかも」
「それならよかった」
「ありがとね、和沙」
「後はちゃんと、彼とじっくり話し合いなよ?」
「うん」

お弁当を食べながら、悠真にメールを送る。
『今日は和沙の家に泊まります。時間を作って話し合いたい。我が儘言ってごめんね』

やっと心から愛してくれる人と出会えたのだから、この縁は失いたくない。

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