Special Edition ②
着ていたチュニックが頭に被され、袖を通す。
「あのさぁ」
「ん?」
「子供が生まれても、こういう夫婦の時間はずっと大事にしような」
「当たり前じゃない」
「…分からないだろ。子供が生まれたら、母親は何かと時間に追われて余裕がなくなるって言うし」
「じゃあ、そういう時間がちゃんと持てるように父親として育児を頑張ったらいいんじゃない?子育てするのは、母親だけの仕事じゃないでしょ」
「……そうだな」
「お互いに育児は初めてなんだから、協力して頑張ろうよ」
「ん」
『幼馴染』から『上司と部下』という関係性に発展し、『上司と部下』から『恋人』に発展した。
そして、『恋人』から『夫婦』という形に進化し、もうすぐ私たちに『家族』が加わる。
何でも完璧にこなす割に意外と不器用だったり。
仕事では妥協を許さないくらい徹底してるのに、子供みたいに拗ねたりする。
そんな彼が、私は大好きで。
この先もずっと彼の一番近い存在であり続けたい。
「かんちゃん?」
「ッ?!!……な、何っ??」
突然の『かんちゃん』呼び。
おねだりする時の合図だ。
「今日は、かんちゃんの好きなジョーズソープのバスボムだから」
「っ……」
ニューヨーク マンハッタン生まれのコスメブランド。
そのジョーズソープのバスボムが私のお気に入り。
それを知っている彼は、『一緒にお風呂に入ろう』と巧みに誘って来たのだ。
お腹が大きくなって来てからはずっと断って来た。
なけなしのプライドというか。
変化し続けるボディラインに幻滅されたくなくて。
「言っとくけど、下着つけてようが服着てようが、俺の目測に狂いはないから」
「っっっ」
「今日という日の栞那を見逃したくないだけ」
もう彼には敵わない。
『これからも毎日、この瞳に君を焼きつけるから』
結婚式の日に、砂浜で彼が誓ってくれた言葉。
ランジェリーデザイナーである旦那様の迸る視線に、今夜も甘く絆される。
~FIN~