Special Edition ②


「彩葉~、悪かったって。ホントにすまない」
「Leave me alone」(今は話しかけないで)

 目には目を歯には歯をよ。
 黙って何でも言うことを聞く妻だと思ったら大間違いなんだから。

 残りの片付けをするためにキッチンへと戻った彩葉を追うように、郁が駆け寄ってきた。

「ちょっと苛ついててって、……これは言い訳か。とにかく、すまん」

 最近仕事が多忙だからと、夫婦の会話を蔑ろにされているという鬱憤も溜まっての、反撃。

 以前の私なら、仕事の邪魔をしないようにと、神経すり減らして対処してたけど。
 息子も3歳になり、私も随分と図太くなった。

「彩葉ぁ~」
「……」
「なぁ、こっち見ろよ」
「……」
「あぁ、もういいよっ、勝手にしろ」
「はぁ?キレ返すとかありえないんですけどっ!」
「やっとこっち見た」
「なっ……」

 そっぽを向いていた私は、彼の言葉に乗せられついつい彼の方を向いてしまった。
 そんな私を待ってましたと言わんばかりに抱きしめられた。

 もうっ。
 ハグしたら、私の機嫌が直ると思ってるんだから。

「それで?何に苛ついてたんですか?八つ当たりは勘弁して欲しいので」
「あーそれか……」

 郁さんに連れられ、彼がさっきまで座っていた場所へと。
 ノートパソコンの画面を見せられた彩葉は、彼の苛つく原因がいまいちよく分からなかった。

「櫂を幼稚園に入れるんですか?」
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