Special Edition ②
都内の有名幼稚園の入園要項のようなものを閲覧し、吟味していたようだ。
両親揃って仕事をしているのもあって、息子の櫂は1歳の時から自宅に程近い保育園に預けている。
財前家から有名ベビーシッターが何人も手配されたが、郁の『社会性を養うため』というゴリ押しに、郁の母親は1億歩譲った形で何とか収束した。
毎日のように家政婦が17時には迎えに行き、自宅マンションで両親の帰宅を待つというスタンス。
櫂本人は嫌がる素振りもみせず、毎日楽しそうに保育園に通っている。
「別に、幼稚園に入れ直さなくても、就学するまで保育園でいいのでは?」
「そうは問屋が卸さない」
「え?」
「母親が、櫂のためにインターナショナルスクールを建ててる」
「ッ!?……建てるつもりじゃなくて、もう建ててるんですか?」
「表向きは体裁のいい説明だったけどな。あれは絶対に櫂を入れる前提だな」
「…………あっ!もしかして、ここの2階と3階の改修工事のやつですか?」
「あぁ。俺も今日知ったんだよ」
ひょえぇぇぇ~~~っ!!
数か月前から改修工事が始まったのだけれど、普段は地下駐車場からエレベーターで最上階へと上がるから全く気にしていなかった。
まさか、まさか。
インターナショナルスクールを薦めるならまだしも。
わざわざ開校させてまで入れようとするだなんて。
セレブの考えることにはついて行けない。
スクールを開設するにしたって、各省庁に働きかけが必要なわけで。
それを思いつきでできるとは思えない。
もしかして、櫂が生まれた時から働きかけていたのでは……?
背筋がぞわっと鳥肌が立った。