Special Edition ②
**

 実家から帰宅し、息子の園問題を何とか解決しようとパソコンを立ち上げたまでは良かったのだが、前日のやり取りでの機嫌がまだ治まってないらしい。

 昨日はなんだかんだと話し合いの場をリビングから寝室へと移し、彼女の気を逸らせたと思っていたのに。

「彩葉?」
「……」
「なぁ、何でそんなに臍曲げてるんだよ」

 昨夜はいつも通りにハグをして、その後も結構ご奉仕した方だと思ったんだが。

「ハグしてキスして、その先も満足させたら私の機嫌が直ると思ってるでしょ」
「っ……」
「私を過去の女と一緒にしないで貰えます?」
「比べたことはないが」
「……そうでしょうか?」

 刺々しい視線が向けられる。
 無意識に手加減していたのがバレたという事か。

 本当に敵わないな。
 俺が幾ら取り繕っても、彼女の前では悪足掻きにしかならない。

 鋼の甲冑を纏ったところで、彼女の心を手に入れるには、完璧な装備ですら足枷になる。

 心を尽くして、全身で彼女と向き合わなければ。

「あぁ~もう、降参!俺の負けだ。頼むから、機嫌直してくれよ」

 寝室へと足早に向かう彼女を追う。

 寝室に入った彩葉はシャワーを浴びに行こうと、着替えを手にした。
 そんな彼女の手を掴んで目で訴える。

「この際だからハッキリと言いますけど、私たち夫婦ですよね?」
「……当然だろ」
「櫂は私たち二人の子供ですよね?」
「……あぁ」
「じゃあ、悩む時もご両親に直談判する時も、一人でしようとしないで下さい。私だってもう財前家の一員ですよ」

 あぁ、そうか。
 彩葉の意見がどうのこうの以前に、最初から二人の気持ちをすり寄せることが大事だったんだ。

「そうだよな」
< 236 / 242 >

この作品をシェア

pagetop