Special Edition ②

 まずはアクション起こす前に、彼女に報告しておくべきだった。
 その上でどうすべきか、どの方向性で考えるかを話し合うべきだったんだ。

「夫婦円満の秘訣だな」

 誰かに頼ろうとか、相談するという概念がそもそも無かった。
 
 彩葉と出会い、沢山の試練を乗り越えて掴んだこの幸せを、自らの手で手放すような真似はしたくない。

「本当に分かってます?」
「あぁ、今回ので懲りたから」
「ホントかなぁ~」

 今までの俺がそう思わせるのだろうな。
 心根が真っすぐな彼女が、疑うような眼差しを向けてくる。

「今度からアクション起こす前に相談するから」
「っ……分かったのならいいですけど」
「じゃあ、出禁解除でいいよな?」
「もう入ってるじゃないですか」
「え?……あ」

 寝室=ベッドだと思っていた俺。
 彼女がいう『寝室』は空間そのものの事らしい。

 こういう些細なことですら、価値観の違いはまだまだある。

「文句言わないってことは、もういいんだな?」
「昨日だって、素知らぬ顔して隣りで寝たじゃないですか」
「……」

 なんだかんだ言っても、拒絶するほど臍を曲げたことがない彩葉。
 感情が豊かだが、俺に遠慮しているのか、我慢する癖がついているようだ。

「言いたいことがある時は、腹に溜め込まないでその都度発散していいんだからな」
「……何ですか、それ」
「もっと思うままに感情をぶつけていいから」
「……」
「ついつい楽な方を選びがちだけど、とことん話し合う時間も必要だろ」
「分かったような口ぶり」
「だから、本当に反省してるって」

 お前無しじゃ、生きていけないんだよ。
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