Special Edition ②

これまでは前方二回転や後方二回転していたメンバーは更に捻りを加えたり、屈伸状態で回転していたメンバーは伸身での回転を練習したり。
自身の技のレベルも少しずつ上げて。
そんなメンバー達の指導もしつつ、俺は自身の離れ技の特訓も取り入れている。

今まではキャッチ&リリースを専門としていて、離れ技自体は演目に取り入れて無かった。
どこのトラピーズでもそうだが、リーダー的役目の人はあくまでも縁の下の力持ちであって、花形の演技をせずにいる。

けれど、ナナのお陰もあって、メディアの注目度も高くなり、俺個人の期待度が増す中。
運営会社とサーカス団の意向で、俺自身も離れ技の演技を取り入れることになった。

毎日のように一応練習はしていた。
けれど、下り技ならともかくとして、演目として離れ技を披露したのは入団して最初の2年くらいで。
それ以来、観客の前で披露していない。

元オリンピックの金メダリストということもあって、名が売れていることもあるだろう。
恋人であるナナも、俺の技が見たいと言ってくれている。

「リーダー、そろそろ休憩しますか?」
「そうだな、30分休憩しようか」

5人だったメンバーが8人に増え、リーダーとしての責任も更に重くなった。
けれど、それだけ期待されている証だから……。

落下防止用のネットの下に下りた俺は、ミネラルウォーターを口にした、その時。
ステージの端に置いておいたスマホが光っているのに気づき、慌ててそれを手に取る。

「ナナ?」

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