Special Edition ②
新技は夏休みに初公開とあって、とりあえずは既存の練習を基本としながら、新技の技術力を徐々に上げて。
メンバー達のスキルは元々高いこともあり、夏前には完成しそうだけど。
集客率を計算しての『夏休み公開』としてるらしい。
俺は個人的にも演技が追加されたこともあり、メンバーの練習が終わった後に1人居残り練習をする日々。
両手には幾つものマメが出来ては潰れ出来ては潰れを繰り返している。
18時少し前。
練習を終えた俺はシャワーを浴びて、自室で筋トレをしていた、その時。
視界の隅にスマホの着信を知らせる点滅を捉えた。
「ナナ?」
「何してたの?」
「筋トレ」
「ウフフッ、相変わらずね」
俺のスマホに掛けてくるのはナナくらい。
電話嫌いな俺は、着信になってもディスプレイを確認して『ナナ』以外出ることは無い。
メンバーは俺が電話嫌いなのを知ってるから、用事がある時はメールしてくるし、テント周辺にいれば直接声を掛けて来る。
「I miss you…」
「私も」
「仕事は終わった?」
「うん」
昼間に会話したばかりだというのに、ナナの声を聞くと無性に逢いたくなる。
他愛ない会話をしていても、やっぱり電話だと寂しさが募る。
手の届く距離にいて欲しくて。
「新しい人って、どんな人?」
「う~んとね、背が高くてちょっと怖そうな顔なんだけど、笑うと可愛らしい人」
「えっ……、男?」
「うん」
「………」