Special Edition ②
新入社員は女性だと思ってたら、まさかの男性。
しかも、笑うと可愛らしいとか……好印象じゃん。
仕事は出来るけれど、人付き合いが苦手だというその新入社員と打ち解ける為に毎日ランチに誘ってるらしい。
俺はナナと一緒に食べたくても食べれないのに……。
聞いた自分が悪いのに、楽しそうに話すから正直腹が立って来る。
「ナナ、悪い。呼ばれたから」
「あ、うん、分かった。またね」
別に呼ばれたわけじゃない。
ただ単に嫉妬して、あれ以上聞いてられなかっただけ。
メンバーやファンにはクールだと思われているが、本当の俺は違う。
感情を表に出すのが苦手なだけで。
アスリート気質だから、昔から毎日練習に明け暮れていた。
オリンピックで金メダルを取る為に。
けれど、その目標も達成してしまって、自分の中の何かが燃焼し切ってしまったというか。
燃え尽き症候群なのかもしれないけれど、そんな単純なものでもない。
8年前のあの日。
ナナに心を奪われてから、彼女にもう一度逢いたいという想いが募って。
オリンピックの連覇も期待され、世界選手権の3連覇もかかっていたけれど、あっさりと引退した。
競技生活よりも心のウエイトが振り切れるほど彼女に逢いたかったから。
連絡先が途絶え、完全に接点が無いのに。
いつかどこかでまた逢える気がして。
あの日、あの芝の上で会えたように。
『運命』というものがあるなら、きっと長い人生の中で再び逢える気がして。
俺の想いが通じたのか。
7年という月日を経て、彼女に再び逢うことが出来た。
初めて会ったあの日よりも、もっともっと綺麗になって……。