Special Edition ②

「最近、リーダー荒れてるな」
「七海さんに会えてないからだろ」
「聞こえてるぞっ!無駄口叩く暇があったら練習しろっ」
「(8年であんなにも日本語って上手くなるものなのか?)」
「聞こえてるって言ってるだろっ!テント回り10周して来いっ」
「ッ?!……チッ」

元々忍者に憧れを持っていた俺は、日本語の勉強をしていた。
国際試合で日本に行く度に沢山の人と会話したくて。

そして、そんな日々の中でナナと出会った。
彼女との出会いは、日本贔屓の俺の背中を押したのは言うまでもないが。
日本語をもっと真剣に勉強しようと思ったきっかけでもある。

ナナと、通訳機を使わないで話したくて。

だから、短期間で上達したのだと思う。
愛の力は底知れぬパワーを秘めているから。

7年もの長い年月会えなくても我慢出来ていた日々を思い出してみるが、あの時は恋人でも友人でも無かったからかのか。
会えなくても寂しいという感情は無かった。

けれど、今は違う。
将来を誓い合った仲なのだから、逢いたいし触れたいし、毎日声を聞きたくて。

だからと言って、演技自体が雑になる事は無い。
幼い頃からずっと競技生活をして来たこともあって、公私の区別はしっかりと分けられるスキルは備わっている。

まぁ、指示の出し方が厳しくなることは多々あるだろうけど。



「ジル、取材の時間だ」
「………OK」

公演や単発のイベント、演技練習や筋トレ以外にもこうして仕事が時々入って来る。
サーカス団の為だし、ナナが広報活動やマーケティングしてくれているお陰なんだけど。
正直、人と会話するのは得意じゃない。
出来ることならしたくないんだけど……。

< 30 / 242 >

この作品をシェア

pagetop