Special Edition ②
今日も有難いことに満員御礼。
午前の部を終え、昼休憩を挟んで、午後は16時開演。
ショッピングモールの駐車場にテントが設営されていることもあり、団員がモールに昼食を買いに行く。
俺はファンに囲まれたくなくて、いつも適当に買って来て貰っている。
ナナが随行している時は、ナナお手製の食事があるのに。
テントから裏に建設された仮設住宅の自室に戻った俺は、ドアノブに袋が掛けられていることに気付く。
「え、……ファン?」
たまにある。
テント正面でなく、裏のプライベート空間に潜り込んで来るファンが。
部屋のドアには『ジル』とは書いてないけど、スタッフに声掛けたらすぐにバレる。
鍵を開け、袋を手にして部屋に入る。
袋の中を確認すると、栄養ドリンクが数本入っていた。
それをテーブルの上に置いてベッドに横になる。
ナナに逢いたい病がどんどん悪化している。
それに今日は3月29日という事もあり、心にポカンと穴が開いている気がして……。
額に手を当て、仮眠を取ろうと目を瞑った。
**
「お疲れさまでした~」
「お疲れさま、ゆっくり休んで」
「リーダーも、しっかり休んで下さい」
無事に午後の公演も終わり、メンバー達は外食しに行くみたいで声を掛けてくれた。
けれど、精神的に疲れ切っている俺は、その誘いを断ってシャワーを浴び終え、自室へと向かう。
明日と明後日は久しぶりの連休。
4月1日から3連続公演というのもあって、その前の休息日になっている。
ナナに逢いに行こうかな。
2日間名古屋で過ごせば、少しくらい逢う時間が取れるんじゃないだろうか?
ふと思いつき、ナナに電話を掛けてみる。
けれど、何コールもしてるのに彼女は出なくて、代わりに留守電に切り替わった。