Special Edition ②
8年前の今日。
ナナが失恋でマンハッタンに来ていたことは薄々気付いているが、いつの日か、ナナの口から話してくれたら……。
「ナナ」
過去にナナが誰と付き合っていようが、関係ない。
気にはなったとしても、今とこの先の人生は隣に俺がいるのだから。
「どうした?」
「………ううん、何でもないっ」
ナナの目尻に薄っすらと涙が滲んでいる。
彼女は笑って誤魔化しているが、俺には何となく分かってしまった。
きっと8年前を思い出したのだと。
ナナは時々物思いに耽る時がある。
そんな時はいつだって涙を目に溜めて。
いまにも溢れそうになっているのに声を押し殺して、強がっている。
俺の前では強がらなくていいのに。
目尻に溜まった涙をキスで拭う。
優しく髪を撫でて、心の傷に寄り添うように抱き締める。
俺のTシャツを掴む手に自分の手を重ね、それをそっと外して指を絡ませる。
その手をベッドに張り付けて……。
「ここに泊るんだろ?」
「……いい?」
「Of course」
この時間にここに来たという事は、明日の仕事は休みなはずだから。
一晩中彼女に触れていたい。
次に逢うのがいつになるか分からないから。
絡み合う視線。
逢えなかった日々を瞳の奥で読み取るように。
優しく触れたつもりのキスが、次第に欲に負けて。
啄むだけでは物足りなくて、甘噛みしても舐めなぞっても足りなくて。
呼吸さえ与えてあげれないほどに舌を絡ませて。
熱い吐息を溢れさせる彼女が愛おしくて、更に深いキスを求めてしまう。
キスに反応して膝頭が僅かに動き、そんな彼女の足に指先を這わせて。