Special Edition ②

周りからはクールだと言われているが、本当は嫉妬深いし、結構俺様気質な部分もある。
リーダーとしての重責がある分、励ましたり褒めたり宥めすかしたりもするけれど。
基本、回りくどい言い方はしない。
口数が少ない分、口にする時は結構ズバリ言い切るタイプ。

そんな俺が、ナナにだけは言葉を選んで。
大半を言葉を押し殺して呑み込んで。
彼女の気持ちを最優先にしている。

他の誰にもそんなことをして来たことなんて一度も無いのに。
惚れた弱みなのかもしれないけれど。

ナナが可愛くて、好きすぎて堪らない。
こんなにも人を好きになったことが無くて。

寝ても覚めても体操しか頭に無かった俺が、あっさりと競技生活を終わらせてもいいと思えるほどの人。

告白したわけでもなく、恋人でもないのに。
たった7日間、毎日デートをしたというだけの単なる知人なのに。

そのたった7日間が、俺の人生を180度変えた。



久しぶりにぬくもりを味わい過ぎたかもしれない。
浅い呼吸を繰り返し、俺の腕の中でぐったりしている彼女を優しく抱き締める。

「痛い所ある?ちょっと強引過ぎたよな」

遠距離恋愛あるあるなんだろうけど。
久しぶりに抱いたという事もあって、ちょっと反省。

「……ジルっ」
「ん?」
「キス、……して」
「っ……、いいの?」
「……もっとぉ~」

ナナは俺のキスが好きなようで、最近いつもおねだりする。
それが何とも言えないほどに嬉しくて。

キスしながら意識を手放し寝てしまうこともしばしば。
よほど気持ちいいのか。
そんな風に彼女を満足させられるなら幾らだってする。

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