Special Edition ②
「ジルのご両親は?日本人の私を受け入れてくれそう?」
「うん、心配ない。ナナの写メ見て、凄く美人だって言ってたし」
「っ……、それならいいんだけど」
「ナナの親に似てるかも」
「え?」
「うちの親、大の日本好きだから」
「えっ、そうなの?!」
「父親が時代劇が好きで、小さい頃に毎日のようにビデオ見せられて。その影響で忍者好きになったから」
「あっ、なるほどね」
何となく似た家庭で育ったことが嬉しくなった。
だから、ナナとは価値観が似てるのかもしれないと。
やっぱり電話だけでは穴の開いた心は埋められない。
こうして彼女に触れて、瞳を見つめて。
他愛ないことを一つ一つ漏らさないように聞き合って。
この時間が何より大事だと、再認識した。
**
翌日、出掛ける用意をして自室に鍵を掛けて、ナナがいる駐車場へと。
テント裏の駐車スペースに辿り着いた俺は、デートを楽しもうと思っていたのに……。
「気安くナナに触れるなっ」
「ッ?!……ジルさん、すみませんっ」
「……ジル?」
久しぶりにテントに顔を出したナナは団員に囲まれていて、フレンドリーに会話するのは我慢出来ても。
ノースリーブのブラウス姿の彼女の肩に手を乗せているのが腹立って。
ナナの肌に触れていいのは俺だけなのに。
「行くぞ」
「う、うん」
彼女の手を掴んで……。
彼女の肩にライダースジャケットを掛け、着させる。
そして、愛車のハーレーダビッドソン(1450㏄/大型)のエンジンをかける。
ハーレーの醍醐味である三拍子のエンジン音が響き始めると……。
俺を怒らせてしまったと思ったのか。
ナナの瞳に涙が浮かぶ。