Special Edition ②
コンコンコンッ。
「はい」
自室のドアがゆっくりと開いた。
「今、大丈夫?」
「ん、平気だけど。荷物、部屋に置いといたから」
「ありがとっ」
ベッドの上で、ロスの自宅に置いてあるギターのチューニングをしていた俺の横に、ちょこんと座った彼女。
黒々と光り輝く瞳が俺を映す。
「何?」
「あのね?」
「……ん」
何か言いたげな表情のひまり。
こういう時は、何か危険な予感がするのは気のせいだろうか?
「ぎゅーしてくれる?」
「っ……ぎゅーして欲しいの?」
「うんっ」
最近、ひまりが甘えるようになって来た。
毎日ではないんだけど。
可愛すぎるそのおねだりが男心を鷲掴みにする。
膝の上にあるギターを横に置き、両手を広げる。
「おいで」
「ありがとっ」
もれなく俺の腕に収まる彼女。
俺の胸に顔を埋めて、手を背中に回した。
やべぇ、めっちゃいい匂いする。
ぎゅっと抱き締めた彼女からふわっと甘めな花の香りが鼻腔を掠めた。
「俺のおねだりも聞いてくれるんだろ?」
「ふぇっ?……んっ……ッんふっ…」
抱き締めたままベッドに押し倒し、驚き固まる彼女の唇をじっくりと味わう。
昨日、送り届けた際にフレンチキスした以来のキス。
手を繋いだり、ハグはその後もしたけど、やっぱり違う。
ぷっくりとした小さな唇は別格というか。
俺の乾いた心を一瞬で潤してくれる。
背中に回されていた手は、いつしか俺の胸元のセーターをぎゅっと掴んでいる。
何度も角度を変え、啄んで甘噛みして。
息をしようと僅かに開いた唇の隙間に舌先を滑り込ませて――。