Special Edition ②

「凄い邸宅ですね」
「えなもこういう家に住みたいのか?」
「え、………いえ」

危ないアブナイ。
『はい』だなんて答えたら、きっと似たような家を建てるに決まってる。
うっかり返答なんてしたら、後々恐ろしいことになりそうだもの。

「旅行だからいいんですよ。私はあの家で十分ですっ」
「今回の旅行先なら、どこがよかった?」
「どこ、……どこも素敵ですよね」

この質問も危険だ。
どこどこがいい、だなんて口にしたら、きっと別荘だか別宅だか建ててしまいそうだ。

「家ならいつでも買えるか。まずはプライベートジェット機を買うか。その方が旅行もし易いしな」
「っ?!……いや、普通の、よくある、どこにでも飛んでるような飛行機で十分ですっ」

ダメだ。
この雰囲気だと、すぐさま御影さんに相談しそうな勢いだ。

「お、お風呂でも入りましょうかっ?!」
「一緒にだよな?」
「っ………、お望みであれば……」
「よし、すぐに風呂にしよう」

話題を変えたのは成功したけど、何だか墓穴を掘ったような……。

「えな」
「あ、はいっ」
「フランスで買ったので頼むな~♪」
「………はい」

買ったランジェリーの事を言ってるのだろう。
日本にお土産に持って帰ろうかと思ったのに、福田さんがいう『現地調達』というやつになってるじゃない。
まぁけど、彼が喜ぶならいいか。



乳白色の湯船に赤い薔薇の花びらが散らされている。
間接照明だけの明かりで幻想的な雰囲気を纏う浴室。
彼との入浴が何回目かは覚えてないけど。
今日のこのお風呂は、きっと忘れることが出来ないお風呂になるだろう。

彼が私の為に溢れんばかりの愛情を注いでくれている挙式旅行なのだから。

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