Special Edition ②

モントリオールの旧市街地に聳え立つノートルダム聖堂。
哲平さんが夜に挙式をセッティングした理由がよく分かる。

下からブルーのライトで照らされる聖堂は幻想的で。
外壁の彫りが美しく彩られ、思わず足が止まってしまうほど心を奪われる。
コバルトブルーの光に照らされた金の祭壇は壮麗で、天井は濃い青に金の星で装飾され、華麗で気品漂う空気を纏う。

九度目の挙式は、夜の煌めく荘厳な聖堂で愛を誓った。

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最後の挙式に訪れた地は、南米コロンビアの南に位置しているナリーニョ県イピアレス市のラス・ラハスの村にあるラス・ラハス教会。
グァイタラ川の峡谷に建造された教会で谷底から百メートルもの高さを誇り、『世界一美しい』と称される教会らしい。

外観は灰色に白と黒のコントラストが華美で、祭壇は岩肌がそのまま剥き出しになっている。
白い柱は花柱のような造りで縁取りが金色で飾られ、歴史的雰囲気を纏う。

都会から切り離されたような秘境の地。
だからこそ、荘厳さがより一層際立つ。
教会を象徴するバラ窓は聖母マリアを表すステンドグラスが何とも言えぬほど美しい。

これが最後だと思うと、感慨深い。
三週間近く日本を離れていたのに、過ぎてしまえばあっという間で。
不意に寂しさが込み上げて来る。

「えな」

頬を伝う涙を拭ってくれる彼。
その瞳は私だけをずっと映してくれていて、心の底から幸せを噛み締めさせてくれる。

牧師さんの前で誓いの言葉。

「生涯、俺だけを見てろ」
「っ……、はい」

よくある誓いの言葉じゃない。
けれど、これが彼と私の誓いの言葉。
これ以上ないほどの彼の愛が込められているから。
私はその愛に全霊で応えるだけ。

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