Special Edition ②

さすがに限界。
マジで限界。

好きな女が隣りにいるのに、手を繋いだり、キスしたり、頭撫でたり、ハグしたり。
これで一年四カ月、俺よく我慢したと思う。

名前も知らない女から告られ、その女とその日のうちに関係を結ぶことなんてザラだったのに。

けど、俺の中でのルールが一応あって。

①会うのは3回まで。
②強要、強制するような言動の子はNG
③髪の質が良質な子
④割勘、贈り物NG
⑤合コンには参加しない
⑥来る者拒まず去る者追わず
など、一定のルールがあったんだけど。

そんな女遊びのルールさえ、今では黒歴史としか言いようのないくらい後悔してて。

本気で好きになった子ほど、経験値なんてものほど不要なんだと思い知らされた。


経験値なんて、無ければ無いほど彼女にとっては好条件で。
女遊びで真っ黒に染まったこの穢れた手で、天使のような清らかな彼女に触れるのを躊躇ってしまう。

助手席に座る彼女の頭を撫でたいのに、僅かな距離でも躊躇して。
このもどかしい距離感と空気感と、心の温度が少しでも縮まればいいなぁと日々悶々。

「あ、あのっ……」
「ん?」

信号待ちで停車していると、隣りの席から声がかかった。
視線を彼女に向けると、何やら言い辛そうに手をぎゅっと握りしめてる。

「何?」
「……来週か再来週の週末、空いてますか?」
「ん、バイト休めば」
「では、お休みして、……お出かけでもしませんか?」
「何、デートに誘ってんの?」
「っ……、ダメですか?」
「ダメなわけないだろ。家に帰ったら聞いてみる」
「はい、ありがとうございますっ」

ヤバい、初めてデートに誘われた。
俺、顔がニヤけてねぇか?

無意識に視線を信号機にロックして、平静を装った。

< 78 / 242 >

この作品をシェア

pagetop