Special Edition ②
さすがに限界。
マジで限界。
好きな女が隣りにいるのに、手を繋いだり、キスしたり、頭撫でたり、ハグしたり。
これで一年四カ月、俺よく我慢したと思う。
名前も知らない女から告られ、その女とその日のうちに関係を結ぶことなんてザラだったのに。
けど、俺の中でのルールが一応あって。
①会うのは3回まで。
②強要、強制するような言動の子はNG
③髪の質が良質な子
④割勘、贈り物NG
⑤合コンには参加しない
⑥来る者拒まず去る者追わず
など、一定のルールがあったんだけど。
そんな女遊びのルールさえ、今では黒歴史としか言いようのないくらい後悔してて。
本気で好きになった子ほど、経験値なんてものほど不要なんだと思い知らされた。
経験値なんて、無ければ無いほど彼女にとっては好条件で。
女遊びで真っ黒に染まったこの穢れた手で、天使のような清らかな彼女に触れるのを躊躇ってしまう。
助手席に座る彼女の頭を撫でたいのに、僅かな距離でも躊躇して。
このもどかしい距離感と空気感と、心の温度が少しでも縮まればいいなぁと日々悶々。
「あ、あのっ……」
「ん?」
信号待ちで停車していると、隣りの席から声がかかった。
視線を彼女に向けると、何やら言い辛そうに手をぎゅっと握りしめてる。
「何?」
「……来週か再来週の週末、空いてますか?」
「ん、バイト休めば」
「では、お休みして、……お出かけでもしませんか?」
「何、デートに誘ってんの?」
「っ……、ダメですか?」
「ダメなわけないだろ。家に帰ったら聞いてみる」
「はい、ありがとうございますっ」
ヤバい、初めてデートに誘われた。
俺、顔がニヤけてねぇか?
無意識に視線を信号機にロックして、平静を装った。