Special Edition ②
恋人同士とはいえ、両親のいない家に彼女と2人きり。
それも、入浴も済ませ、あとは寝るだけなのに。
「部屋行こ」
「……うん」
彼女の手を引き2階へと歩き出した俺に、嫌がる素振りも見せずに付いて来るひまり。
これはこれで嬉しいし、めっちゃ可愛いんだけど。
少しくらいは拒否れよとか思ってしまう。
自分の部屋に連れ込んで無条件でベッドに座らせた。
「警戒心なさすぎ」
「だって……」
「だって、何?」
「…………もん」
「ん?何て言ったの?」
恥ずかしそうに俯く彼女の顔に耳を近づけた、次の瞬間。
「一緒にいたいんだもん」
「っ……、そういうことは今言っちゃダメなんだって。言ったら速攻で身ぐるみ剥がされて食べられちゃうんだぞ?分かってるか?」
「うん、……分かってるよ」
「分かってて言ってんの……」
「だって……」
「だって、何?」
こういう時のひまりの言葉は相当危険だって分かってる。
最近というか、あの日以来、彼女は心の中を隠すことなく言うようになった。
『後悔したくないから』と彼女は言うが。
俺にとったら拷問でしかない。
「食べられても……構わないもんっ」
「っ……」
ほらね。
何重にも制御装置搭載してたって、彼女のワンプッシュでいとも簡単に全解除になっちゃうんだから。
「あとで泣いても知らねぇぞ」
「……泣かないよっ」
組み敷いた先の彼女は、潤んだ瞳で俺を映す。
母親が言うように、ひまりは日増しに色気が出て来た。
自分も『女』だと意識して来たからだと思うけど。
恋の経験値が無い分、スピードをセーブする術も持ち合わせて無くて……。