Special Edition ②
高校の時同様に、俺のことを周ではなく、皆シュウと呼ぶ。
別に違和感はない。
むしろ、彼女と家族と、店の従業員だけが知っていればいいと思ってる。
だって、『周さんのこと、あまねって呼ぶの私くらいですよね』と彼女が嬉しそうに言ってたから。
彼女=特別、という方程式を当てはめると、他の奴らに『あまね』と呼ばせてはいけないように思えて。
「シュウの彼女、今日も可愛いな」
「ジロジロ、見んな」
「いいじゃん、見るくらい」
一番仲のいい岡田龍二は、俺の肩に腕を乗せ、ニヤリと笑みを浮かべた。
彼女である蘭が入学して一カ月。
元々美人でスタイルのいい蘭は、あっという間に注目の的になり、一年だけでなく、俺の同級生の連中からも狙われている。
まだたった一カ月だというのに、既に七人、告白して来たらしい。
だから、こうして毎日のように彼女を自宅にまで迎えに行って、わざと当てつけるみたいにして『彼氏』アピールをしてるんだけど。
なんか、イマイチ効果なし。
まぁ、俺にも告って来る女の子がいるのも確かで。
お互い様と言えばそうなのかもしれないけど。
それでもやっぱり、気分悪ぃ。
「あ、そう言えばさ、シュウ、技能検定受けるんだって?」
「ん~」
「マジか!やっぱ、すげぇな」
「そうか?」
「ん」
パン職人のスキルを証明するのに必要な技能検定。
通常一番下の三級でさえ実務経験二年以上。
だから、入学した学生は卒業と同時に三級を受けるのが一般的。
だけど、俺は既に実務経験七年。
去年夏に三級、冬に二級に合格した。
そしてこの春、その上の一級の申し込みをしたところ。
年に二度の技能試験があり、実技と学科の試験が行われる。