Special Edition ②
一日の授業を終え、駐車場で待ってると、蘭が手を振りながら走って来た。
「遅くなってすみませんっ」
「走らなくてもいいのに」
付き合い始めて一年四カ月。
なのに、彼女は敬語のような丁寧な口調で俺に接する。
イラっと来た時とか、ふてくされてる時は別として。
基本、他人行儀な言葉遣い。
俺が年上だというのもあるのかもしれないけれど。
龍二に『彼女との温度差感じねぇの?』と言われてハッとした。
確かに、温度差は前から感じてる。
恋愛に関しては俺も初心者だけど、女の扱いは慣れてる分、もしかしたら抵抗感持たれてるのかもしれない。
『他の女で培ったスキルを私に使わないで』
これが一番心に突き刺さった。
だから、かける言葉にも結構気を遣ってるんだけど……。
「なぁ」
「はい」
「今朝言ってた、デートでどこに行くつもり?」
「まだ決めてないですけど。周さんが行きたい所があれば、どこでも」
「じゃあさ、グランピングしねぇ?」
「あ、いいですね!」
「テントとか食材も用意されてるし、結構ラクして楽しめるって龍二が言ってた」
「そうなんですね」
「んじゃあ、決まりな」
「はい」
GWでどこも混み合うのは分かってる。
龍二の親戚が営んでいるというグランピングならいつでも頼めると言っていたから。
今夜にでも龍二に頼もうっと。
蘭を乗せ、自宅のある隣市へと車を発進させた。
バイト時間は細かく決まってなくて、学校が終わり次第、バイトに入る仕様になってる。
最近では、蘭も作業場に入る事が多くなって、彼女の腕もメキメキと上がって来ている。