Special Edition ②

うちのパン屋は、従業員の誕生日にみんなで少しずつ出し合って、プレゼントをするのが恒例で。
たぶん、誕生日が近づいて来たから、その話をしてたんだけど思うけど。
去年の誕生日の頃は、まだぎこちなくて。
あえて触れずにいたから……。

「サンキュ」
「大したものじゃないんですけど」

照れてる彼女から袋を受け取ると、何故かずっしりと重くてびっくりした。

「何入ってんの、これ」
「開けてみて下さい」
「なんか、すげぇ重たいんだけど」

結構な大きさの袋から箱を取り出す。
紺色の包装紙に包まれていて、ご丁寧にリボンまで綺麗に巻かれてある、そのラッピングを解くと。

「えっ……、これ、凄く高いやつじゃん」
「そんなでもないですよ」
「いや、高いって」

今まで女遊びを散々して来た俺は、『彼女』を作ったことが無くて。
『彼女』に関連するお泊り、贈り物、束縛といったものを全て避けて来た。

だから、必然的に蘭から貰ったこれは、身内や従業員以外で考えると、初めての贈り物で。

目の前の箱の中には、俺が愛用している靴のブランドのショートブーツが入っていた。

これ、結構するよ。
俺が今履いてるこのブーツでさえ、数万するもん。

「なんか、気遣わせて悪いな」
「全然。いつも送り迎えして貰ってますし。何より、私がプレゼントしたかったので」
「履いてみてもいい?」
「もちろん」

さっそく履いてみる。
めっちゃ履き心地がいい。
当たり前か。
俺が好きな靴のブランドだし。
履き心地がいいのは分かってる。

「えっと、あの……」
「ん?」
「その……」
「言いたい事があるなら、ハッキリ言え」
「あ、はい。……別に、別れたいとかじゃないですからね?!」
「は?………あぁ~、うん」

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