Special Edition ②
靴を恋人に送ると『別れる』というやつか。
別にそんなことは気にしない。
そもそも、噂なんて信じるタイプじゃないし。
「えっとですね」
「ん」
「新しい門出とか素敵な場所に連れて行ってくれるという意味もあるみたいで」
「へぇ~」
「素敵な成人を迎えて貰いたいなぁと思って」
「……二十歳だからか」
「はい」
なるほど。
そういう意味でか。
5月19日が誕生日。
だから、高三の時は、夏休みに車の免許も取れた。
あっという間に二十歳か。
自分の誕生日ですら忘れてた。
「蘭、ありがとうな」
俺の前にしゃがみ込んでる彼女の頭を優しく撫でて、彼女を隣りに座らせる。
すると、珍しく俺の肩に寄り添うみたいに体を預けて来た。
思わずビクッと体が震えてしまった。
情けねぇ。
散々それ以上のことをして来たってのに。
この愛しの蘭の前では、何の役にも立たないらしい。