孤独を生きる君へ
串木野さんが告白して二人が付き合ったって、これからの生活に支障が出たりするわけではなかった。

それに今日は初めてのバイトで、私なりの新しい世界への第一歩なのだ。

その裏には家にいると息苦しいとか、暇を持て余してとか、親に捨てられそうだから今のうちに稼げるだけ稼いで貯めておこうとか、確かに第一歩ではあるけれどそれは表面の話であって、本当はもっと見苦しいものだった。

家に帰らないで済むのは相当気が楽になる。

家にいるだけで息苦しくて休める気もしない。呼吸が上手くできなくなるみたいに苦しくて、寝ようとしたって何にもならない。

先生は時々「〝しっかり〟休んできてくださいね」なんて小学生に向けるようなことを言ってくる。〝しっかり〟ってなんだろう。しっかり休めるところなんてないですよ。そう、先生に訴えたくなる。

でも本音を訴えたところでどうだ。先生が助けてくれることなんてないだろう。私が知る限りの教師たちは。

何かしてくれるとしても親に電話をかけることくらい。そんなの絶対にごめんだね。親にそんな電話が回ったら、家に帰ってからどうなっているか想像もつかない。
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