アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
「まさか、ただの美容師です」

「女の子に言っていたSNSって、大都のですよね」

「もちろん、大都さんのですよ。人違いだってわかりますし、嘘は言っていません。女の子は秘密が好きですから、勝手に納得してくれたみたいですね」

 北川さんはクスリと笑う。

 あの”内緒だよ”というジェスチャーには特別感を持たせる意味があったんだ。女子たちは簡単に引き下がってくれる雰囲気じゃなかったのに、すんなり引いたのは、HIROTOと秘密を共有したという思い込みからだったのだ。
 それを簡単にやってのけるとは……。
 人が()く、のほほんとした感じだと思っていたけど、とんだ手練れだ。

 そうだよね。これだけの見た目、モテないはずはない。
私の中の好奇心が疼く。

「北川さん、もしかして相当モテます? 百戦錬磨とか?」

「百戦錬磨……あはは、その言葉、ゲームでしか聞いたことが無いよ。期待に添えられず残念だけど、そんなにモテないんだ」

「またまた謙遜して。絶対にモテるでしょう!」

「謙遜じゃなくて、本当にモテないんだ。僕なんて振られてばかりだよ」

北川さんは、寂し気に眉尻を下げる。

「ごめんなさい。余計なこと言いました。女子とのやり取り見て、鮮やかだなと思って……」

「それは、職業柄色んな人と話しをするからね。相談を受けることもよくあって……でも、自分のことになるとぜんぜんダメなんだ」

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