アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
先付けの細タケノコの和え物や目にも鮮やかは八寸は、どれも美味しくてお酒が進む。
 2杯目のビールが運ばれて、グラスに口をつけた北川さんは、思い出したように話しを始めた。

「大都さんから僕に影武者を頼もうかなって言われたのは、きっと、由香里さんと暮らし始めて直ぐぐらいだったんじゃないかな? うれしくて誰かに話したいのに迂闊に出来る話しじゃないのに、僕に話してくれたんだ」

 暮らし始めたころは、私のことを揶揄ってばかりだった大都。それなのに北川さんに私の話をしていたとは意外だった。

「私のことをなんて言っていたんですか?」

「詳しい話しは、本人から聞いた方がいいと思うけど、再会出来たのをとても喜んでいたし、真っすぐに由香里さんを想う気持ちが伝わってきて、大都さんの恋を応援したくなったんだ。そんな恋が出来るのが、うらやましくも感じたかな」

 そう言って、北川さんは、目を細める。
 大都が部屋に転がり込んでから、私の毎日はジェットコースターのように目まぐるしい。それに、私自身が気付かなかったことも大都によって気づかされた。

「私の母、ヘアサロン[healing]のオーナーなんですけど会ったことありますか?」

「ああ、何度かお会いしている。パワフルな方だ」

「そうなんですよ。昔から元気いっぱいで、恋愛をしているのがエネルギーに変わるみたいで、仕事もバリバリしていて、いつも忙しくてすごいですよね。反面教師って言うんでしょうか。私は愛とか信じられなくて、冷めた恋愛しかしてこなかったんです」

「どうして?」
< 106 / 211 >

この作品をシェア

pagetop