アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
「ただ、対外的には由香里さんのお付き合いの相手が僕ということになってしまうので、申し訳ない」
 
と、北川さんは眉尻を下げた。
でも、申し訳ないのはこちらの方だと思う。
今回の大都の代役に北川さんほど最適な人物は居なかったはずだ。
北川さんは、大都と仕事で繋がりがあるだけでなく、私の母の経営する美容室で働いている。見た目が似ているという身体的特徴もさることながら、万が一、関係を深掘りされた場合でも出会いのストーリーを作りをやすい。
”母親の経営する美容室に行った際に、施術してくれたのが、きっかけでつき合い始めた”とか、いくらでも話しが作れるのだ。

「いえ、迷惑かけてるのは私の方です。自分たちの恋愛に北川さんを巻き込んでしまって申し訳なくて……。母にはボーナス弾むように言っておきますね」

 謝り過ぎて雰囲気が重くならないように、最後は冗談めかしで肩をすくめた。

「あはは、期待しているよ」

「あの、今日は、たくさんお話しを聞いていただいて、気持ちが軽くなりました。ちょっとした感謝の気持ちです。これ受け取ったください」

 そう言って、今日買った服が入っているショップバッグを差し出した。
 大都の分は宅配で送ってもらう手はずになっている。ショップバッグの分は北川さんへのプレゼントとして買ったものだ。

「……こんな高価なものは受け取れないよ」

「でも、風通しのよすぎるジーンズより、この服の方が風邪を引かずに済みますよ」
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