アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 TVの中で黒いサングラスのタレントが、最近人気急上昇中だと言うボーイズグループの紹介を始め、数人の男の子たちが画面に映り込む。
 その中でも一際目を引くシルバーハイトーンの髪の人物がいた。

「おや?」と目を凝らし、身を乗り出して画面を食い入るように見てしまう。

 すると、不意をついたようにガチャと扉が開き、私は慌てて顔を向けた。
 ドアから現れたのは、さっき、追い出したはずの大都だ。

「やっぱ、ココの部屋いいな。公園も近いし、治安もよさそうだ」

ご機嫌な様子で首からかけたタオルで汗を拭っている。その反対に私はワタワタと焦りまくり、手にしたワイングラスを落としそうになった。

「えっ⁉ なんで入って来れたの?」

「さっき、鍵もらったけど」

 大都の手の中で、カードキーがひらひらとしている。

 何を飲むかの話しをしたときにランニングに行くからと、カードキーを渡したんだ。
 痛恨のミス!!

「くっ!!!」

 悔しさで悶絶している私をよそに、大都の涼しい声が聞えて来る。

「この前、撮影したやつ、もう放送されているんだ」 
 
 TV画面では、私の中にあるアイドルのイメージを覆すようなパワフルなダンスと歌を披露している7人グループが映っている。
 7人は同じ振り付けで踊っているのに、自然と目を引くのはシルバーハイトーンの髪の人物だ。
 リズムを刻むときの細かい手の動きや肩の入れ方が際立っている。

 イヤイヤイヤ、ダンスの上手さに驚いている場合じゃない。
 まず、目の前の疑問を解かなければ。

「君、大学生だったと思っていたけど……」

アイドルやっているなんて、聞いていない!
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