アイドルなんかじゃありません！わたしの元義弟なんです!!
　会場(ハコ)が2500人ぐらいのライブには行ったことがあるが、ドームのような大規模会場のライブは初めてだ。
　それにしても、まだ始まっていないのに溢れんばかりの人と熱気。
　会場はステージの設営の関係で4万人ほどの集客だと聞いた。

　私は、松本さんと福田さん、それと推し活仲間だという山口さんと合流して、早速とばかりにツアーグッズコーナーに連れて行かれる。　
　アイドルグループだと、いろいろ細かなルールがあるみたいで、各メンバーに推し色と言うのがあり、その推し色のタオルやTシャツ、ペンライトその他もろもろを進められるままに購入した。

「うちらの推しのHIROTOは、白なんですよ」
　と、小鼻を膨らませ、興奮気味で松本さんが教えてくれる。
　今からそんなにテンションMAXで居たら、ステージが始まったら血管がぷっつりイッテしまいそうな気がして、心配になってしまう。

　正直、これだけ買うと結構高額だ。これが推しに貢(みつぐ)と言うことなのだろう、と妙に納得。
　私としては、その場の雰囲気を楽しめて姿が見られれば十分な気がするのだが、松本さんと福田さん曰(いわ)く自分の推しのために出来る限りのことをするのが、推しへの愛を示す証になるらしい。
　推し活を布教というあたり、ホントある種の信仰に似たものがある。

　指定席につき、会場を見渡すとティーンエイジャーからマダム世代、それに男性の姿もあって、老若男女問わずファンがいるんだなと思った。
　これだけの人が、BACKSTAGEのパフォーマンスを見に集まっているのだ。
　私は嬉しいような誇らしいような、それでいて少し寂しいような、複雑な気持ちになりながら、まだ、主役のいないステージを見つめていた。

　やがて、会場のライトが暗くなり、いよいよステージが始まる。
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