アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
「大学生もやっているし、BACKSTAGEってグループでダンサーもやってる」

 何でもないように言っているけど、仕事と学業両立がどんなに大変か、想像に難くない。顔も良ければ頭も良いんだ。(性格は悪いけど)
 それにしても、キー局の人気音楽番組に出演するような売れっ子アイドルだったなんてスゴイ。
 
「そうなんだ。アイドルやっているなんて、ぜんぜん知らなかった。そもそもTVなんて見ないから、BACKSTAGEってグループも知らなかったのよ」

「知らなかったんだ……。まだまだだな」
 
 大都は、そうつぶやき視線を窓の外へ向けた。

あれ⁉ ちょっとプライドを傷つけた?

「それで、都内に家もあって、仕事もして稼いでいるはずの君が、なんで住むところが無いのか不思議なんだけれど」

 いろいろ頑張っているのかも知れないけれど、だからと言って、私が面倒見なければならない言われはない。
 私は、快適独身ライフを守りたい。

「実家の住所が、SNSに流されてファンの子たちに取り囲まれて、帰れなくなったんだ。しばらくホテルに居たんだけど、結局、人目があるから落ち着かなくて、勝代さんに相談したらお姉さんのところへ行けって」
 
「母さんが無責任に人に丸投げしたことには変わりは無いけど、急に来たのには、それなりの理由があったのね。それにしても、いまだに母さんと連絡とっていたんだ」

 僅かな期間だけ継母だったのに、今も交流していたのは意外だった。

「ヘアカットはずっと勝代さんのお店」

 恥ずかしいのか、大都はぶっきらぼうに答えた。

 理由を聞いたら追い出し難くなってしまった。でも、快適独身ライフも手放したくない。
 どうしよう……。
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