アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!

推し活仲間は、元気です

 家族との顔合わせを終えてから数日経ち、私はエステサロンmodération 赤坂店の奥にある事務所でパソコンに向かい、鼻歌まじりの上機嫌で、売り上げのチェックをしていた。

「この作業もリモートにすれば、家でもできるのよね」

 上手く仕事を振り分けて、任せるところは任せ、自宅で作業できるように整理しようと頭の中で計画を練る。
 今から準備すれば、この先、子供が産まれてからもスムーズに店舗が回せるだろう。

 親からも結婚の承諾をもらえ、あとは大都の契約が切れるのを待って入籍する予定だ。出産予定日の少し前が契約終了のタイミングだったのもツイている。
 そう、契約更新をしないで大都は表舞台から退くつもりでいる。
 人気グループBACKSTAGEのメインダンサーであるHIROTOが、事務所との契約更新をしないのは、きっとメンバーにとって大きな痛手になるだろう。
 大都の仕事については、大都が判断するべきであって、私がとやかく口を挟むのは過干渉になってしまう。けれど、ステージで輝くHIROTOのダンスが見れないのは、ファンとしては一抹の寂しさを感じる。

 自分との生活を選んでくれたのに、素直に喜べない。
 それは、自らダンス中毒と言っていた大都。彼がコツコツと積み上げてきた影の努力を知っているからだ。
 
「大都の契約なんだから、私が心配したって、どうにかできるものでもないんだけどね」

 ふぅー、とため息を吐き立ち上がり、気分転換に休憩室に向かう。
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