アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
「絶対、強く押した……」

 涙目の大都が私に訴えかけてくる。

「うっ……だから、痛いって」

 素知らぬふりをして手を動かし続け、足のリンパマッサージを施していると、最初よりもゴリゴリとした感触が薄れてきた。

「ダメよ。リンパが詰まっていると体に悪いんだから、痛いのはリンパが詰まっている証拠よ。ゴットハンドと言われたこの私が、直々に施術してあげているんだから有難く思いなさい」

「お姉さん……ドSだ」

「さっき言ったでしょう? 口も悪ければ、性格も悪いって」

「マジ、こんな展開望んでなかった」

 してやったりの状況にフフッと笑いがもれる。

「あら、君が触って良いって言ったから、こうなったのよ。私は満足しているわ」

「……やられた」

「でもね、ちゃんと体を手入れしてあげれば、明日は気持ちのいい朝が迎えられるはずよ。体が資本なんでしょう?」

「まいった……」

 観念したのか大都の言葉数が減り、やがて静かになった。
 マッサージも一通り終わり、私も夢中になり過ぎたのか薄っすらと汗をかいている。

 もしかして寝てしまったのかな?と、顔を覗き込めば、綺麗なアーモンドアイの瞼は閉じて、スースーと寝息を立てていた。

 それにしても、まつ毛も長くて、顎のラインもシャープでキレイだ。

 顎とかグリグリすると結構イタイんだよね。
 この顔を弄りまわしたい欲が芽吹く。

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