アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 スマホが着信を告げている。大都からの連絡だ。

「もしもし大都!」

『由香里、また嫌な思いをさせてごめん。変に神経使わせてしまって、体調は大丈夫?』

 大都の声を聞いて、ざわざわと落ち着かなかった気持ちが()いでいく。

「心配してくれてありがとう。私は元気だから大丈夫よ」

『それなら良かった。由香里とお腹の子供に何かあったらどうしようかと思っていた』

「ふふっ、本当に大丈夫だから」

『ん、元気な声を聞いて安心した』

 電話越しで聞こえる大都の声が、心なしか沈んでいるように感じられた。

「……もしかして、記事を押さえるの難しそうなの?」

『ごめん。実は、いろいろ手をまわしているが、この前の雑誌と違って時間が足りなくて……記事になるのを押さえられそうにないんだ。迷惑をかけることになるかも』

「わかったわ。元々は、私が歩けなくなるほど酔っぱらったのがいけないんだし、覚悟をするわ」

 あのときは、若い大都と付き合う不安から別れを考えて、まともに歩けないほど飲みすぎてしまったのだ。へべれけになった私を大都が抱き上げてくれた際、週刊ScoopOneの茂木に撮られてしまった。
 なにもかも、私の心の弱さが原因だ。

『俺も出来る限りのことはする。それに、万が一にも記事を押さえられなかった場合でも、必ず由香里のことは守るから』



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